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2013年10月31日(木)更新

「巴潟新聞」8号発行、やっぱりブランドは継続力です

「小さくても光り輝くブランド」をプロデュースしているクエストリーの櫻田です。

東京・両国の「ちゃんこ巴潟」さんのブランドデザインを担当して3年が経ちます。
「ちゃんこ」「相撲」「両国」ですから、ある意味ではかなり特殊な分野での商売です。
特殊な分野ということは、言い方を変えれば取っ付きにくいということです。


 
しかし、先ほどの3つは知れば知るほど奥が深い世界でもあります。
同店の主力メニューであるちゃんこの世界、それのバックボーンである相撲界、
そして店舗がある東京・両国・・・かなりマニアックでディープな世界ですよ。
 
いまでは違ってきていると思いますが、
例えば、相撲の世界では場所中は4つ足の豚や牛は食べなかったそうです。
なぜかというと、手を着く=負けというイメージだからだそうです。
まあ、一種のげん担ぎですね。
 
さて、この奥深い世界観を伝えるためにはどうしたらいいのか?
これがブランドデザインの課題でした。

のれん、のぼり、ショップカード、座布団、コースターなどの見直しと平行して
クエストリーが提案したのは「巴潟新聞」の発行でした。
 
インターネットも重要な情報発信ツールですが、
あえて印刷媒体にしたのは、比較的年配の方のご利用が多いこと、
すでに巴潟会員という組織があり、ここが口コミの源になりそうだと言う読みがありました。
 

1年に3回の発行で、11月に発行するのが8号目となります。
テーマが見つからない、コストがかかる、文章が多過ぎないか?・・・
発行過程ではいろいろな課題はありましたが、
楽しみにしているというお客様の声が8号まで続けられた理由でもあります。


 
ちなみに8号では、同店の人気メニューである塩味ちゃんこ「国見山」のルーツの紹介、
そして行司の最高位の立行司37代、木村庄之助さんのインタビュー、
和の文化イベント「巴潟ちゃんこ寺子屋」の開催報告などを掲載しています。


 
往々にしてこの手のツールは、顧客とのコミュニケーションを目的にしながら、
いつの間にか販促ツールになってしまいがちです。
しかし、巴潟新聞は販促色を出来るだけ少なくし、じっくりと読んでいただく紙面に徹しています。


 
巴潟会員には郵送していますが、ちゃんこ巴潟のテーブル席やレジ横にもおいてあります。
寒さが日増しに強まる季節、どうぞ、「ちゃんこ巴潟」でおいしいちゃんこ鍋を食べながら、
この巴潟新聞にぜひお目を通してください。

ちなみに、会員になれば定期的に送ってくれますよ。お得な割引クーポンももらえます。
ちゃんこ巴潟→http://www.tomoegata.com/map_coupon/

 

2013年10月30日(水)更新

コンセプトは「呼吸する店舗」

「小さくても光り輝くブランドをプロデュースしている」クエストリーの櫻田です。
 
クエストリーが
コンサルティングで関わらせていただきました、
紬のきものの専門店「衣裳らくや」さんの新店舗が本日プレオープンとなりました。
場所は、東京の歴史あふれる町、浜町です。甘酒横丁を抜けたところにあります。



今回の店舗開発で大事にした考え方は「呼吸する店舗」です。
店は生き物です。生き物である以上、呼吸するようにその表情を変えます。
勘違いして欲しくないのは、経年劣化という意味ではありませんよ。
 
店が人々を引きつける要素は、立派な外観でも、美しい内装でもなく、
店舗そのものが持っている情報の発進力です。

ディスプレイや演出もそのひとつですが、
今回の「衣裳らくや」の店舗では、もう一歩踏み込んだ考えを店内に盛り込んでみました。

 
四季のある日本の豊かな季節感は、自然と一体となった独特の文化を作り出しました。

そのひとつが、1年間を「十二ヶ月」に分け、さらに24等分し15日に分けた「二十四節気」、
それをさらに約5日ずつの3つに分けた「七十二候」と言う季節の考え方に現れています。
 
僕たち日本人は、無意識のうちに、
十二ヶ月、二十四節気、七十二候を感じながら、生活をしています。
例えば、立春、立秋、冬至と夏至とか・・・ですね。



本来、季節感を背景にして作られ、生活に根ざして着用されてきたきもの自体が文化なのですが、 
新店舗では、もう一歩踏み込み、日本独特の暦の力を現代に編集し、
お客様の生活にそっと寄り添いながら、毎日情報を発信し続けられないかと考えたのです。


と言っても空間も、予算も限られています。
大げさではなく、小さな遊び感覚の楽しい情報発信です。

まずは、1階から2階への階段に「12の和の物語」というミニギャラリーを設けました。
毎月テーマを変えて写真や絵画を展示いたします。
いまは、らくやブランドのひとつ「倉渕紬」の出来上がるまでの物語を写真で紹介しています。


 
また、今回とくに力を入れたのが「24の和のお稽古」です。
「二十四節気」にちなんで、きものの着付け教室だけではなく、
和に関する様々なカルチャー教室を開催します。その数が24講座あるのです。
 
1階には、小さな「和の文庫」をもうけました。
「七十二候」のように、5日ごとにテーマを変えて、らくやが選んだ本を展示します。
現在は、近くの明治座が11月に歌舞伎を開催するので、歌舞伎に関するおすすめ本が並んでいます。


 

そして、忘れてはならないのは、365日のスタッフの着物姿の笑顔です。
これはオープンの案内状の表紙をご覧いただければおわかりになると思います。
みんなすごくいい笑顔ですよ。


 
さて、これからが本番です。
お近くにお越しの際は新しくなった「衣裳らくや」にぜひお立ち寄りください。
 

2013年10月29日(火)更新

ミッションは現場の一つひとつの行動にあり

「小さくても光り輝くブランドをプロデュース」しているクエストリーの櫻田です。
 

このところ連日のように食品偽装の問題が伝えられています。
とくに注目が集まっていた阪急阪神ホテルズの出崎社長は、11月1日付で、
同社の社長と親会社の阪急阪神ホールディングスの取締役を辞任すると表明しました。
 
一連の報道を見聞きする中で感じるのは、
食品の偽装のいきさつや組織の対応のまずさなどもあるのですが、
ブランディングの視点からみると、同社の「在り方」は何だったのかということです。



 
阪急阪神ホテルズの親会社の阪急阪神ホールディングスは
2006年に阪急電鉄と阪神電気鉄道が経営統合して発足した会社です。

同社は、傘下の類似事業の統合を進め、
ホテル事業も2008年に阪急阪神ホテルズとしてスタートしました。
 
ちょっと気になったので、阪急阪神ホテルズのミッションをサイトで調べてみました。

 
同社の企業理念とスローガンは次のように定められています。

ー心豊かな社会の実現に向けてー

私たちは、常に変革に取り組み、「安心・快適」
そして「夢・感動」をお届けすることで心豊かな社会の実現に貢献します。


「満足、そして感動(Delight)へ」




 
どういう経緯でこの理念が制定されたかはわかりませんが、
「裏切られた」「失望した」という宿泊客や利用者の声の前ではむなしく感じられます。
何のための理念だったのかなというのが正直の感想です。

 
クエストリーではいま3社のミッションの立案に取り組んでいます。
ミッションの立案段階で時々錯覚が起きます。

それはミッションを作ることが目的になってしまうことです。

ミッションは断じて作ることが目的ではありません。
ミッションに基づき、目指すべき在り方に向かって変わっていくことが大事なのです。

だからこそ「ミッションは現場の一つひとつの行動にあり」ということを、
あの手この手を使い、関わる全員で繰り返し繰り返し確認します。

朝の掃除にも、電話の出方にも、お茶の出し方にも
商品やサービスの使い方にもミッションは宿るのだと思います。

 
単なる個人的な憶測でしかありませんが、
阪急阪神ホテルズの理念は作って終わりだったように感じられます。

これもまた極めて個人的な感想ですが、
スローガンの「Delight」という言葉に強い違和感を覚えます。

ミッションはきれいな言葉で飾ることではありません。
「Delight」という言葉からは生々しい現場の息づかいが感じられないのです。


報道によると、合併を繰り返して発足した阪急阪神ホテルズには、
組織変更と人事異動で、経営側と現場の意思疎通の不十分さがあったと言われています。

もしかすると理念を浸透させることよりも、
経営陣の力は合併による社内のパワーバランスを調整することの方に注がれていたのかもしれません。

 
現場には「安心・快適」「夢・感動」をお届けすることに
情熱を燃やしている社員がたくさんいるはずです。

しかし、残念なことですが、理念に立ち帰り、何をすべきかを本気で考え、
実行する経営陣がいなかったということだと思います。

 

2013年10月28日(月)更新

「小さくても光り輝くブランド」の読書会を始めました。


 「小さくても光り輝くブランドをプロデュースしている」クエストリーの櫻田です。
 
約2ヶ月ぶりのブログアップです。

弊社には今年の4月に二人の女性メンバーが入社しました。
 デザイナーの大西さんは学校に通いながらアルバイトとして弊社で1年半働き、
卒業を機に正社員として入社してくれました。

もう一人の岡田さんは大学卒業後、1年間の中学校の教員生活を経て、
ご縁があってプランナーとして入社してくれました。
 
二人ともすごくがんばってくれています。
僕が働き始めたときと比べるとはるかに優秀だな。

そうはいっても、弊社の業務のブランドのコンサルティングと
ブランドデザインの仕事は、個別の対応が多く、マニュアル化がなかなか難しい。
 
10社には10社のブランディングが存在します。
日々仕事をしながらブランディングには正解がないことを実感します。
もちろんブランディグの知識は必要ですが、それだけは中小企業の経営者には通用しません。
 
そう言ってしまうと身も蓋もないのですが、
幸いなことに、会社を立ち上げてから10年間のなかで、もがきながら?
作り上げてきたクエストリーならではのブランディグのセオリーがあります。

それは教科書的なものではなく、お取り引き先といっしょに作り上げたものです。
それをまとめたものが今年の3月に出版した「小さくても光り輝くブランド」です。

弊社が考えるブランディグの基本の考え方、強いブランドに共通するポイント、
10社のブランディグ事例、ブランドになるための4つのステージなどをまとめた一冊です。



 

前置きが長くなりましたが、あるとき本を読んでいるとこんな感じの文章に出会いました。
「一人ひとりの社員の成長が、会社の成長の基盤となる」。
確かにそうだと思います。そして、社員の成長の場を作ることが会社の役目だと感じました。
 
人間的な成長、社会人としての成長、技術的な成長・・・成長にはさまざまな要素があります。
当然、ブランディングが仕事ですので、それを通じて成長して欲しいという思いもあります。
 
しかし、言うのは簡単ですが、実際にはどうしたらいいのか・・・やっぱり悩みますよ。
ただ、単なる知識や技術の取得ということではなく、
モノの考え方や見方が深まることが大事だという思いがあります。
 
ならばブランディングを通じて、自分のモノの見方や考え方を
見つめる場を作ればいいのではと考えました。

もっと言うとブランディングを考えざるを得ない状況を作り出すことです。
(もちろん、追い込むのではなく、いい意味でですよ)

そしていろいろと考えて「小さくても光り輝くブランド」の
読書会を行うことにしたのです。
(実は読書会は前職の会社で嫌というほど経験しています・・・)
 

僕も含めて3名で、月に3回、始業前の朝9時から9時半までの30分間、
会社の近くのタリーズコーヒーで、一章ずつ読んできて感想を語り合うだけの会です。

ひとつだけ、気をつけているのは、僕が教えるという雰囲気にならないようにすることです。
 
今週31日が3回目になりますが、実は一番勉強になっているのが僕自身のような気がします。

若い二人の女性から、自分の書いた本の感想を聞くことができるのですから・・・
実際に2回の読書会ではっとさせられることがいくつもありました。
 
浸み込むのがブランディングですが、読書会も同じように感じます。
なにせ一章ずつですから、先は長いのです。
コツコツと続けていこうと思います。