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2012年03月26日(月)更新

「期待をはるかに超える」とはどういうことでしょうか。

「人々が幸せになるブランド」をプロデュースするクエストリーの櫻田です。

あるお店が相当な費用をかけて店舗改装をした時のこと。
あるお客様が経営者に向かってこう言ったそうです。

「いままでのお店ならば許せたことが、これからはそうはいかなくなりますね」
店舗改装によってお店に対する「期待」のハードルが上がったのです。

今回はこの期待と言うことを考えてみたいと思います。
意識しているかどうかは別として、お客様は必ず期待を抱いてあなたの店や会社を利用しています。
そしてその期待に対する結果は、次の5つに分類することが出来ます。

1段階目は「期待を無視」、2段階目は「期待以下」、3段階目は「期待通り」、
4段階目は「期待以上」、そして5段階目は「期待をはるかに超えて」です。

5番目の「期待をはるかに超えて」は、驚き、感動のレベルと言ってもいいかもしれませんね。

でも、「期待をはるかに超えて」と言うと、普通は何か特別なことをしなければならないと思いますよね。
お金や時間やエネルギーもすごくかかりそう。そんなに簡単には出来ません。
それに特別なことって何か裏があるように感じられませんか。

でも「期待をはるかに超える」はそんなに難しいことではありません。
「期待をはるかに超える」はどんなことをしたら相手が喜ぶかを考えることから生まれます。

これの気が付き方のレベルが高ければ高いほど、「期待をはるかに超えて」が生まれます。

例えば電話を例にとって考えましょう。
知り合いの女性に電話をかけ、「○○○です」と告げると、
間髪開けずに「ああ、○○○さん、電話ありがとう」と言う声が戻ってきます。
ただこれだけのことですが、電話をかけてよかったなあと言う気持ちになります。

例えば、ホチキスで止まった資料のコピーをお願いすると、
戻ってきたときに、ホチキスが外されたままの場合と、
元通りきちんと止められている場合があります。やはり後者の方がうれしいですね。
大したことではないかも知れませんが、これに気が付くかどうかです。

例えば、打合せを後に18時の飛行機に乗られるお客様がいたとします。
打合せはちょっと厄介な内容で、長引く可能性があります。
そんな時に羽田空港に17時30分に着くには何時に出ればいいかを
事前に調べておくかどうかで、相手の印象は違ってきます。

このように、「期待をはるかに超える」と言うことは、
実は平凡なこと、当たり前のこと、誰でも出来ることを、特別なことにすることから生まれます。

そのためには相手が喜ぶことを考え続ける習慣を作ることだと思います。
これが「期待をはるかに超える」ための気づきを生み出します。

2012年03月19日(月)更新

「愚直」とは何か?

「人々が幸せになるブランド」をプロデュースしているクエストリーの櫻田です。

「愚直」………いまはあまり使われない言葉ですが、辞書で引いてみますと、
「正直なばかりで臨機応変の行動をとれないこと。
また、そのさま。ばか正直。」あるいは
「正直すぎて気のきかない・こと(さま)。馬鹿正直。」と書かれています。

文字通り受け止めると、融通のきかない愚かなことのように感じますよね。

しかし、ここで言いたい「愚直」は、“自分の仕事に真っ直ぐな”という意味です。
誠実といい直した方がいいのかもしれませんが、もっと強烈な一途な思いのことです。

仕事をしていると壁にぶち当たるのは当然のことです。
とくにブランディングは先の見えないレースの様なものです。

本当にこれでいいのだろうか?独りよがりになっているのではないか?
自分の考えのために社員を道連れにしているのではないか?………迷いが生まれます。

敬愛している市井の教育者、石川洋さんの言葉にこういう一文があります。

「何をしているのではなく、何を続けているのかである」。

精神論や教訓的なことではなく、ひとつのことを成し遂げるには、
いつの時代も常に磨き続けなければなりません。

磨き続けるということは、革新し続けるということです。

「愚直=愚か、辛い、地味、暗い」ではなく、「愚直=革新、深堀り、進化、ワクワク」なのです。

石川洋さんは、先の一文の後に次のような文章を続けています。

「時代の寵児であろうと、地味な仕事についていようとそれは問題ではない。
明日どうなるかわからないからである。
真実は、いまの仕事が継続したことの延長であれば、いつか事は成るということである。」

「継続には、必ず『志』や『目標』がともなうからだ。
『虚仮(こけ)の一心』というが、一つのことをつづけると、いつか能力となるのである。
時代の流れ、体裁、損得にとらわれない、一生を貫く仕事を持ちたいものだ。」

業績が落ち込み、先行きが見えなくなると、隣の芝生が青く見えてきます。
しかし、いまあなたが立っているところがメインステージです。

ここで踏ん張らなくてどうする………そんな気持ちになりますね。
「愚直」この言葉の意味を噛みしめましょう。

2012年03月13日(火)更新

「同質化経営」と「独自化経営」

「人々が幸せになるブランドをプロデュースする」クエストリーの櫻田です。

3月12日に、(株)C&I Holdings(旧商号:ベンチャー・リンク)が東京地裁へ民事再生法の適用を申請しました。

同社は1981年に設立された経営情報提供とフランチャイズ(FC)開発支援企業として、
全国的なFCブランドをいくつも立ち上げてきた企業です。

その経営手法は、全国各地の新しい業態を発掘して、FCブランドにパッケージングし、
FC本部に出資する一方、FC加盟店の勧誘・指導・育成を行うというものです。

しかし、このFCブランドのパッケージングと言う手法は明らかに時代とのギャップを起しているように思います。

先日の「第25回ブランディングセミナー」で、中小企業の経営課題は、
構造的な不況、東日本大震災や原発の影響も確かにあるが、
最大の課題は「同質化競争」の渦の中に巻き込まれていることと述べました。

ベンチャー・リンクの破綻でもそのことを感じるのです。

「同質化経営」の原動力は売上や利益やシェアといった数字です。
数字は経営の重要な要素ですが、それに振り回されることは経営の目的ではありません。
「同質化経営」は、お金が中心軸にして回っている経営であり、最終的には会社や個人だけの幸せの追求です。

先ほどのFCブランドのパッケージ化ビジネスにも、この「同質化経営」の匂いを強く感じてしまうのです。

経営を単純な2元論で論じるのは20世紀型ですが、わかりやすくするためにあえて述べます。

「同質化経営」の対極にあるのは「独自化経営」です。

「独自化経営」の軸は、規模は小さくても、他がどうであろうとも、
自分の店でしか実現出来ない価値を追求し、存在感を高めることに力を注ぐことです。

そこにあるのは、喜びや楽しさがみんなの幸せにつながると言うポリシーです。

「独自化経営」はこれまでニッチで経営規模が小さいと思われてきました。
しかし、生活者の価値観や経営の在り方が大きく変わったいま、
「独自化」を軸に多くの支持を得ている中小企業が世の中にはたくさん存在します。

その鍵は「ブランディング」にあります。

しかも、それらの「独自化経営」の中小企業は水面下で緩やかにつながり、
コラボレーションやコミュニケーションにより、新たなブランドを次々と生み出しています。

時代の大きな潮目を感じずにはいられませんね。

2012年03月06日(火)更新

地図を求めるのではなく、コンパスを求める。

「人々が幸せになるブランド」をプロデュースするクエストリーの櫻田です。

「地図を求めるのではなく、コンパスを求める。」
これはMITメディアラボ所長の伊藤穣一さんが、1月17日に東京・潮留での講演で語った言葉です。

MITとはアメリカのマサチューセッツ工科大学のこと。
MITメディアラボは1985年に創設された世界最先端のメディア研究の拠点のひとつですね。

伊藤さんは昨年4月に250人を超す候補者の中から新所長に選ばれました。
伊藤さんが語ったのはインターネットと社会の変化のことですが、
「地図を求めるのではなく、コンパスを求める」と言う言葉はブランディングにも通用しますね。

先行きが見えない時代に地図を求めても不確かでしかありません。
それにブランディグには、行き先までの道のりが書いてある地図はありません。
方向だけが分かる「コンパス」を持って進むのがブランディングです。

ブランディングの「コンパス」は何かと言うと、
“誰を、どのように、幸せにするのか”というミッションですね。

どの方向に向かっているのかさえ分かっていれば、詳細な地図は必要ありません。
それに地図通り行くのはあんまり楽しくはありませんね。

ブランディグでは関わる人全員が「コンパス」を持たねばなりません。
なぜならば、一人ひとりがブランドを体現し、それを実践する主役だからです。

いちいち地図を広げて確かめているうちに、目の前のお客様はあなたの目の前から去っていってしまいます。

伊藤さんは講演では「アジャイル:agile」と言うことも語っています。
「アジャイル」とは“俊敏な”の意味です。

「いままでの中央管理型というものは、あらゆるすべてのリスク、あらゆる可能性を設計して作ってきた」、
しかしこれが難しくなっていると言うのです。

しかし、伊藤さんの言う「アジャイル」は、とりあえず作ってやりながら考えると言う感じです。

変化が急速ないま、事前に一生懸命考え過ぎるのではなく、まずはやってみることが大事ですね。
念入りに考えているうちに状況が変わってしまうことさえあります。

「アジャイル」でプロジェクトを進めるには、正確で詳細な地図ではなく、
大まかな方向を指し示めしてくれる「コンパス」が必要と言うことです。

そうそう、忘れるところでした。MITメディアラボは副所長も伊藤裕さんと言う日本人です。
日本人が世界で活躍していますね。