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2017年01月15日(日)更新

いぶし銀のようなピアニスト

日曜日の午後、ジャズを聴きながら仕事をしていると
ピアニストのデューク・ジョーダンが作曲した「No Problem」が流れてきました。

この「No Problem」は、題名がそうだからではなく、
気分が滅入ったり、落ち込んだりしたときによく聴きます。

僕にとっては、精神安定剤のような一曲です。

まずは、このYouTubeをお聴きください。
https://www.youtube.com/watch?v=pFBVAeowI0Y


実はこの曲は別名『危険な関係のブルース』とも名付けられています。
『危険な関係』とは1959年に公開されたロジェ・ヴァディ監督のフランス映画です。



当時、フランス映画ではジャズを映画音楽として使う事が流行していました。

『危険な関係』のオリジナル曲は、フランス人のジャック・マレーと、
当時フランスに滞在していたピアニストのデューク・ジョーダンが作曲しました。

そして、演奏したのは、アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズ。

アート・ブレイキーの人気もあり、『危険な関係のブルース』は大ヒットしたのですが、
作曲者としてクレジットされたのは、ジャック・マレーの名前のみでした。

デューク・ジョーダンの名前は一切記載されていなかったのです。
当然、ジョーダンには印税は入ってきませんでした。


デューク・ジョーダンは、物や名声に執着しない性格で、
華やかなスポットライトとは無縁の人でした。



若い頃は相当喧嘩っぱやかったようですが、人が良すぎることも災いして、
1960年代に入ると演奏の仕事がなくなり、タクシーの運転手をしていた時期もありました。

10年間ほどジャズ界から遠ざかっていたジョーダンですが、
1970年代に入ると心機一転ヨーロッパを中心に演奏活動を再開します。


『FLIGHT TO DENMARK』とタイトルされたこのアルバムは、
カムバックした直後の1973年にコペンハーゲンで録音されたものです。

北欧の雪景色の中に立つジョーダンの姿はぐっとくるものがあります。
ジャケ買いしたジャズファンも多いと思います(僕もその一人です)。



決して派手さはありませんが、訥々とした響きが心を穏やかにさせてくれる演奏です。
このアルバムによって、ジョーダンは復活を遂げるきっかけをつかむのです。

その後もジョーダンはヨーロッパを中心に活動を続け、
2006年8月8日、デンマークで亡くなりました。享年84歳でした。

デューク・ジョーダン、まさにいぶし銀のようなピアニストです。
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