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2015年12月07日(月)更新

再読、ヘミングウエイの「老人と海」

「小さくても光り輝くブランド」をプロデュースしているクエストリーの櫻田です。
 
日曜日に思い立って本棚の奥にあった
アメリカの作家、アーンスト・ヘミングウェイの「老人と海」を取り出して読みました。

本がたまるたびに処分してきたけれども、これは処分せずに手元に残しておいた一冊です。
 
新潮文庫の奥付けを見ると、昭和46年の16刷、こちらは高校生ということになります。

訳者が大正生まれの名翻訳家、福田恆存(つねあり)というのにも驚きました。
もうひとつ驚きは、この本の値段が100円ということ。文庫本って手頃だったんだなあ。


 
ヘミングウェイは「陽はまた昇る」「武器よさらば」など、
高校生のころに取り憑かれたように読んだ作家の一人です。

この小説もずいぶん前に読んだはずなのですが、ぼんやりとしか覚えていませんでした。

 でもページをめくるうちに、少しずつ「ああ、こういう物語だったんだ」とよみがえってきました。
高校生の頃はさほどおもしろく感じなかったように思います。

今回読み終えると、切なくほろ苦い物語なんだと感じました。
それだけ、歳を取ったということかな。
 

この小説は、サンチャゴという老漁師と巨大なカジキの3日間に渡る死闘を描いています。
といっても、ドラマチックなストーリーではなく、むしろ淡々としています。

後半の釣り上げた後のアオザメとの戦いの方がリアリティを感じますね。
 

物語に奥深さを漂わせているのは老人を慕う少年とのやりとりです。

誰も助けに来てくれる望みがない場面で、困難に直面した時に人はどうするのか?
実際に手助けしてくれなくても、少年がいることがサンチャゴの救いになったのです。

 
仕留めた巨大なカジキはアオザメに食べられ、港にたどり着いた時には骨だけになっていました。

もちろん、お金にもならず、誰にも評価されないのですが、
老人と少年には共通するも思いがありました。
 
少年はいま乗っている船を降りて、老人といっしょに働きたいと伝えます。
実際にそうなるかはわからないのですが、老人にとってうれしい一言です。

しかし、物語はその感情を抑えて、淡々と締めくくられます。
 


諦めというと、どこか投げてしまった感がありますが、
そうではなく、それはそれで自然なことだと冷静に受け止める感覚です。

こちらも60歳を過ぎて、この諦めという感覚が少しだけわかるような気がします。
 
ヘミングウェイは後年の飛行機事故の影響で、
自分の身体が不自由になったことから鬱病となり、最後は猟銃で自分の命を絶ってしまいます。
 

ヘミングウェイの文体はハードボイルドといわれますが、
その奥には少年のようなナイーブな感情が潜んでいるように感じます。

だからこそ、ハードボイルドなのかもしれませんが………。
 


クエストリー:http://www.questory.co.jp