大きくする 標準 小さくする

2012年05月30日(水)更新

「ビリー・ホリデイ」の「奇妙な果実」に込められたメッセージ

「人々が幸せになるブランドをプロデュースする」クエストリーの櫻田です。


 
店や会社を経営するということは、望む、望まないは別として
「ひとつのメッセージを世に送り出すこと」だと思っています。
とくに昔から店は「構える」「張る」と言われるように、存在そのものがメッセージ性を持っています。
 
しかし、このメッセージと言うやつはなかなか難物です。
ただ伝わればいいわけではなく、やはりそこに共感が必要なのです。

メッセージは言語や文字で伝わるのが一般的ですが、
強い共感を生み出すには、時代や状況に合わせた独自の編集が必要です。
今日はそんな話をしたいと思います。

 
1930年代に活躍したジャズシンガーに「ビリー・ホリデイ」がいます。

彼女の有名なレパートリーは「奇妙な果実:Strange Fruit」です。
この曲は1930年にニューヨーク市ブロンクス地区の
ユダヤ人教師「エイベル・ミーアポル」によって作詞、作曲されました。
 
「奇妙な果実」とは何か?

それは木にぶら下げられた黒人の死体のことです。
当時のアメリカ南部では黒人をリンチにかけて木に吊るし、
火をつけて焼き殺すことがしばしば行われていました。

ミーアポル教師は人種差別を告発する歌としてこの曲を作ったのです。
 
グリニッジヴィレッジのナイトクラブ「カフェ・ソサエティ」の支配人はこの歌を耳にし、
クラブの専属歌手の「ビリー・ホリデイ」に歌うことを勧めました。

あまりにも陰惨な歌詞に危惧を抱きながら、
初めて彼女が「奇妙な果実」をステージで歌った時のことです。
 
歌が終わると客席はしーんと静まり返り、拍手ひとつ起きませんでした。
「ああっ、歌わなければよかった」と思った瞬間、
一人の客の拍手をきっかけとして、客席全体が割れんばかりの拍手と称賛の声に包まれたのです。
 
黒人の地位や権利がまったく保証されておらず、虐殺が日常茶飯事であった当時の状況を考えると、
黒人女性が人種差別を告発する「奇妙な果実」を歌うのは非常に危険な行為でした。
しかし、彼女は1939年からこの歌を必ずステージの最後に歌うようになったのです。
 
こうして「奇妙な果実」に込められたミーアポル教師のメッセージは
「ビリー・ホリデイ」により、黒人への暴力の反対運動を代表する歌として広まっていきました。
やがてこれが20年後に黒人やマイノリティグループの公民権運動へとつながっていったのです。
 

最近強く感じるのは、「ブランディングとは公益性を持った経営活動」と言うことです。

ライバルや競合に勝ことだけの「同質化競争」は自分だけの幸せが目的です。
しかし、競争とは無縁の「独自化経営」は、お客様はもちろんこと、
経営者も社員も取引き先もみんな喜ぶことが目的であり、結果として社会の幸せにつながります。

<7月度ブランディングセッションのご案内>

日  時:7月11日(水)PM13:45~17:00(受付開始13:15)
会  場:銀座ブロッサム(中央会館)7階・ジャスミン

参加料:「ブランディングクラブ」発足記念につき、
     限定30名様まで無料!
     (残数が少なくなっています。お申し込みはお早めに)

 

詳細は→http://www.questory.co.jp/