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2013年05月21日(火)更新

世界で最も模倣されたロゴ

「小さくても光り輝くブランド」をプロデュースしているクエストリーの櫻田です。

 
「アイ・ラブ・ニューヨーク(I ♥ NY、I Love New York)」というロゴをご存知だと思います。
今回はこのロゴにまつわる話です。






 
この世界的に有名なロゴは、1970年代半ばにスタートした
「I love New York」観光キャンペーンの一環として生まれました。


当時のニューヨークは強盗や暴動が増加し、治安は著しく悪化していました。
人種差別や移民の問題、貧富の格差などが背景にあったのは言うまでもありません。
さらに市の財政も破綻の危機に直面し、観光業界もかなりの痛手を負っていたのです。
 

そんな中でニューヨークのイメージを回復させようと、
ニューヨーク州観光局は有名なグラフィックデザイナーの
「ミルトン・グレーザー(Milton Glaser)」に観光キャンペーンのロゴのデザインを依頼するのです。
 
「ミルトン・グレーザー」は、グラフィックデザイナーというよりも
工業デザイナーとして建築デザインから店内装飾、
エディトリアル、広告デザイン、CIなどの幅広い分野で活躍した人です。

 アメリカのデザインに詳しい方ならばグレーザーが社長をしていた
有名な「プッシュピンスタジオ」の名前を聞いたことがあると思います。
そう言えば「ボブ・ディラン」のレコードジャケットもグレーザーの作品でした。

顔写真を見ると、なかなか気骨のある人物という印象ですね

  
 

さて、「I love New York」のロゴですが、
当初、グレーザーは横に並べた細長い2つの楕円のなかに、
それぞれ「I Love」と「New York」という文字を入れたデザインを提出しました。

しかし、タクシーに乗っているときに、新しいデザインを思いつき、
即座にポケットの中にあった赤いクレヨンで
封筒の切れ端にスケッチを残したと言われています。

そして、このスケッチしたデザインが最終的に採用されたのです。


「I love New York」観光キャンペーンは見事大成功を収め、
ニューヨーク市は経済を立て直して、世界的な観光都市となったのです。

ところでこのロゴの登録商標はいまはニューヨーク州観光局が持っています。
 
ロゴによる年間収益はおよそ3,000万ドルほどあると言われていますが、
デザインしたグレーザーはまったくその利益を享受していないそうです。


「ニューヨークを助けるために無償で仕事を引き受けたから」
とグレーザーは語っているとか・・・。う~ん、カッコいいなあ。


いまやこのロゴがプリントされたグッズはニューヨークみやげの定番となり、
買物のレジ袋にもこのロゴ(もちろん模造品)が描かれています。
 
さらに、ニューヨークだけでなく、「I ♥ ○○」のように
さまざまなバリエーションやパロディ(要はパクリね)が生まれています。

いうなれば、世界中で最も模倣されたロゴが
グレーザーがデザインした「I love New York」なのです。


「I love New York」のロゴデザインを見るたびに、
ブランドデザインの力ってすごいなあとあらためて思います。