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2013年10月29日(火)更新

ミッションは現場の一つひとつの行動にあり

「小さくても光り輝くブランドをプロデュース」しているクエストリーの櫻田です。
 

このところ連日のように食品偽装の問題が伝えられています。
とくに注目が集まっていた阪急阪神ホテルズの出崎社長は、11月1日付で、
同社の社長と親会社の阪急阪神ホールディングスの取締役を辞任すると表明しました。
 
一連の報道を見聞きする中で感じるのは、
食品の偽装のいきさつや組織の対応のまずさなどもあるのですが、
ブランディングの視点からみると、同社の「在り方」は何だったのかということです。



 
阪急阪神ホテルズの親会社の阪急阪神ホールディングスは
2006年に阪急電鉄と阪神電気鉄道が経営統合して発足した会社です。

同社は、傘下の類似事業の統合を進め、
ホテル事業も2008年に阪急阪神ホテルズとしてスタートしました。
 
ちょっと気になったので、阪急阪神ホテルズのミッションをサイトで調べてみました。

 
同社の企業理念とスローガンは次のように定められています。

ー心豊かな社会の実現に向けてー

私たちは、常に変革に取り組み、「安心・快適」
そして「夢・感動」をお届けすることで心豊かな社会の実現に貢献します。


「満足、そして感動(Delight)へ」




 
どういう経緯でこの理念が制定されたかはわかりませんが、
「裏切られた」「失望した」という宿泊客や利用者の声の前ではむなしく感じられます。
何のための理念だったのかなというのが正直の感想です。

 
クエストリーではいま3社のミッションの立案に取り組んでいます。
ミッションの立案段階で時々錯覚が起きます。

それはミッションを作ることが目的になってしまうことです。

ミッションは断じて作ることが目的ではありません。
ミッションに基づき、目指すべき在り方に向かって変わっていくことが大事なのです。

だからこそ「ミッションは現場の一つひとつの行動にあり」ということを、
あの手この手を使い、関わる全員で繰り返し繰り返し確認します。

朝の掃除にも、電話の出方にも、お茶の出し方にも
商品やサービスの使い方にもミッションは宿るのだと思います。

 
単なる個人的な憶測でしかありませんが、
阪急阪神ホテルズの理念は作って終わりだったように感じられます。

これもまた極めて個人的な感想ですが、
スローガンの「Delight」という言葉に強い違和感を覚えます。

ミッションはきれいな言葉で飾ることではありません。
「Delight」という言葉からは生々しい現場の息づかいが感じられないのです。


報道によると、合併を繰り返して発足した阪急阪神ホテルズには、
組織変更と人事異動で、経営側と現場の意思疎通の不十分さがあったと言われています。

もしかすると理念を浸透させることよりも、
経営陣の力は合併による社内のパワーバランスを調整することの方に注がれていたのかもしれません。

 
現場には「安心・快適」「夢・感動」をお届けすることに
情熱を燃やしている社員がたくさんいるはずです。

しかし、残念なことですが、理念に立ち帰り、何をすべきかを本気で考え、
実行する経営陣がいなかったということだと思います。