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2011年12月02日(金)更新

作り上手の伝え下手

「人々が幸せになるブランド」をプロデュースするクエストリーの櫻田です。

今週の月曜日に、「フードスタジアム」主催の経営戦略セミナーで、
ブランディングのことを話す機会をいただきました。
参加者の多くは飲食業界の方々。レストランや飲食店を経営されている方や、
そこにお酒や食材を納めている会社、マスメディア関係の方々だったたようです。

フードスタジアム:http://food-stadium.com/

第1講座を担当し、ブランドとは何か、ブランド価値の見つけ方、探し方ついて話しました。
第2講座は、カンブリア宮殿でも取り上げられた「APカンパニー」の
米山順子さん(取締役企画本部長)、野本良平さん(取締役副社長)とごいっしょのパネルディスカッションでした。

APカンパニー:http://www.apcompany.jp/

パネルディスカッションってこれまで何度もやりましたが、結構難しい。
しかし、今回は、米山さん、野本さんの経営に対する考えが
極めて明快でしたので、すごくやりやすかったですね。
ミッションと仕組みをきちんと整合性を取って進めている見事な経営です。

第3講座は、ワインの伝道師(個人的にそう呼ばせていただきます)の
ヴィノシティの藤森真さんのワインを取り巻く状況についての講演でした。
神田で2店舗のお店を経営されている藤森さんはとにかく熱い人、ワインに対する志しがはっきりとしています。

ヴィノシティ:http://www.societe-charpente.com/vinosity/

セミナーを通じてたくさんの気づきがありましたが、そのひとつが「作り上手の伝え下手」ということです。
各地には地域の特性を生かした商品や食材をまじめに一生懸命作ったり、収穫している人たちがいます。
また、それを使って料理を作る人たちがいます。

しかし、残念なことに作ることにはプロなのですが、
それをどう伝え、販売するかという視点が不足していることが少なくなりません。
おいしいものを作れば支持してくれるはず、いいものを作れば買ってくれるはず………でもこれって錯覚だと思います。

食に関するビジネスの難しさは“おいしさ”は主観だということです。
同じものを食べても人によって異なりますし、その時の状況にもよって違ってきます。
この異なる“おいしさ”を伝えるためには“おいしさの方向性”を示し、理解してもらうことがとても大事。

「当店はこういうものを“おいしい”とする」という軸を明確にすると言うことです。
「APカンパニー」さん、「ヴィノシティ」さんは、この軸がはっきりとしていて、ぶれない強さを持っています。

膨大な情報が氾濫している中では、どんなにおいしいものでも伝わらなければ価値がないのと同じです。
食に限らずですが、商品の素晴らしさが100あるとしても、
お客様に20しか伝わらなければ、その商品は20の価値しかもっていないのと同じです。

作り手は100だと思っても、受け手に20しかおいしさが伝わらなければ“おいしくないよね”と言うことになります。
自分たちが考える100のおいしさをどう伝えるかが、その店の独自性になりますね。
伝わらなければ、自店ならではの強みや他との違いは生み出せません。

でも、難しく考えることはありませんよ。
おいしいということの「価値のタネ」は意外と身近に眠っています。
“どこが他と違うおいしさなのか”“どんな風においしいのか”“おいしい理由は何か………
真剣に自問自答し、明文化することにより、伝えるべきことが見えてきます。