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2009年01月20日(火)更新

画家アンドリュー・ワイエス氏が亡くなりました

20世紀を代表するアメリカの画家、アンドリュー・ワイエス氏が
1月16日にペンシルベニア州フィラデルフィア郊外の自宅で亡くなりました。
91歳でした。静寂感が色濃く漂うこの画家の描く絵が僕はたまらなく好きです。
観ていると作品の向こう側にあるいろいろな物語を感じます。

ワイエスは、水彩やドライブラッシュやテンペラを使って、
アメリカの原風景ともいわれる故郷のペンシルベニア州やメーン州などを
描いた画家です。
人物画にもすばらしい作品を発表しており、
別荘近くに住むオルソン家のシリーズや
長年にわたって1人の女性を描き続けた「ヘルガ」シリーズなどがあります。

僕がワイエスの絵と始めて出会ったのは、高校生頃の時ですから、
いまから35年ほど前のこと。
当時発行されていた月刊「プレイボーイ」(たぶんです)に、
「クリスティーナの世界」という有名な作品が掲載されていたのです。
 
草原に横たわる遠くを見つめるクリスティーナという女性を描いた
この作品に僕は強く惹かれました。
その後、ずっとワイエスは気になる作家であり、
日本で展覧会があると、足を運びました。

30代の半ばにはアメリカのニューヨーク近代美術館(MoMA)で
「クリスティーナの世界」と出会うことが出来ました。
30分ほど作品の前から離れることが出来なかったことを覚えています。
メトロポリタン美術館の近くの画廊では、新作の作品展を偶然行っており、
観ることが出来ました。

1990年には池袋西武にあったセゾン美術館で
「アンドリュー ワイエス展」が開かれました。
ワイエスが近くの農場で働いているヘルガという女性を
モデルに描いたシリーズの作品展でした。

240点ほどにも及ぶこのヘルガのシリーズは、
誰にも見せることなく、長い間ワイエスのアトリエに保管されていました。
20年近く前にヘルガシリーズを見た時の衝撃は忘れられません。

ちょうどいま水彩や素描を中心とした
「アンドリュー・ワイエス-創造への道程(みち)」展が
愛知県美術館で開催されます。
昨年の11月には東京・渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで
開催されていましたので観に行きました。
会場ではワイエスの近況を伝える映像も流されており、
作品への情熱をいきいきと語っていました。
インタヴューで最近ハーレーダビットソンを描いたといっていたので、
まだまだ元気だなあと思っていたのに………。

いつかワイエスの作品がたくさん所蔵されている
ペンシルバニア州南西部ブランデイワイン河沿いにあるという
ブランディワインリバー博物館(Brandywine River Museum)に行ってみたい
日曜日にヘルガシリーズの画集や展覧会の目録を久しぶりに開いて、
そう思いました。

ヘルガシリーズ
ヘルガシリーズの画集より