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2009年01月24日(土)更新

店のブランド力を強くする4つの法則③

こんにちは、クエストリーの櫻田です。

「店のブランド力を強くする4つの法則」の3回目です。
いよいよ、4つの法則についてです。
今回はまず、第1の法則についてご説明いたしますね。



繁盛している専門店に共通している4つの法則とは?

司会:
さて、いよいよ本論に入りたいと思います。
ブランドは「記憶のスタンプ」とおっしゃいましたが、
記憶のスタンプになるための要素、それは何ですか?

櫻田:
私たちはこれまで多くの専門店のブランディング・プロジェクトを通じて、
店の記憶のスタンプ化に取り組んできました。
また毎週発行しているショップブランディング・レポートのために
たくさんの繁盛店を取材し、
セミナーや勉強会でも講演をお願いしてきました。
そこで確信した繁盛店の最大要因は
「店がブランドになる」こと
なのです。
そしてブランドが育っていくプロセスには共通要素があったんですね。

岡本:
私たちはそれを4つの法則にまとめました。
ひとつ目は「独自性の発見」です。
ふたつ目が「顧客価値の創造」です。
3番目が「物語の熟成」、
そして4つ目が「スタイルの形成」です。


第1の法則「独自性の発見」とは?

櫻田:
ひとつ目の「独自性の発見」は、
店の強みといってもいいかもしれないね。
よく差別化という言葉を使うけれども、独自性は比較論ではありません。
結果として、他店と比較して優れているところになることはあるが、
基本は他にない自店だけの強みのことです。

岡本:
専門性ともちょっと違いますよね。
専門性は独自性の一部でしかないわけですから。
個性ということではちょっと曖昧すぎます。
中から見ていると、自分の独自の強みは見つけにくいようですね。
あまりにも当たり前すぎて、気がつきません

櫻田:
独自性の話をしますと、「うちには独自性なんかないよ!」
そうおっしゃられる経営者の方が少なくありません。
でもね、独自性や強みがない店はないんですよ。
これは自信を持って言い切れるね。
ただ、独自性が眠っているか、それに気が付いていないだけのこと。
光の当て方が違っているんだなあ。


岡本:
11月のショップブランディング・セミナーでは、
独自性を生み出す10の着眼点を発表しましたよね。

櫻田:
そう、10の着眼点ね。
でもこれはあくまでも着眼点であって、
やはり自分自身で確信しなければダメ、
そういう意味では、独自性はこれを捨てたらもう後がない
というような突き詰めた世界だと思うね。

岡本:
我が店がお客様から選ばれる理由の源にあるものですね。


※次回4回目に続きます。

2009年01月23日(金)更新

店のブランド力を強くする4つの法則②

こんにちは、クエストリーの櫻田です。
さて、「店のブランド力を強くする4つの法則」の2回目です。
今回も対談形式でお届けします。

ブランドとは何か?
店がブランドになるということはどういうことなのか?


司会:
さて、いまブランドという言葉が出ましたが、
一般的にブランドというと、海外の高級品や特別な品を思い浮かべますが、
店がブランドになるということはどういうことなのでしょうか?

櫻田:
「店がブランドになる」ということの前に、
ブランドとは何かを整理する必要がありますね。
私たちはブランドとは「記憶のスタンプ」といういい方をしています。
人間の脳はこれまでに経験したことをすべて記憶しているそうです。
記憶の中に強く捺されたスタンプがブランドです。
その名前を聞いたときに、そこで経験した格別な存在感が
よみがえってくるのがブランド。


パスポート

岡本:
そういう意味では、ブランドはお客様の頭の中に
出来上がるもの
なんですよね。
例えば、羊羹と聞くと私は瞬間的に
虎屋さんを思い浮んできて、あのおいしさを感じます。

櫻田:
そうだね。お客様の頭の中で、
絶対的な信頼感や圧倒的な存在感につながるものが
ブランドということだね。
そうであれば、店がブランドになることは十分あり得るし、
現にブランドと評価されている専門店はいっぱいあるね。

岡本:
当初、私たちクエストリーは
「店をブランドにする」という表現を使っていましたけれども、
正しくは「店がブランドになる」ということですね。
いくら発信側が自分たちはブランドといっても、
お客様や社会がブランドと評価してくれなければブランドとはいえませんよね。

櫻田:
そうだね。お客様がブランドと認めてくれなければ、
それは絵に描いた餅でしかないね。
ブランドとは「記憶のスタンプ」、お客様の頭の中に、
築きあがられるのがブランドだね。
お客様の「記憶にスタンプされる」には、
多くの広告予算を投入し、店舗イメージを高め、
店舗数を増やさねばとお考えになられる方もいると思いますが、
いくら売り上げが大きくても、店数が多くても、
お客様、消費者がブランドとして評価してくれなければ、
ブランドとはいえない
わけだね。

司会:
なるほど、ブランドのことが少しわかりかけてきました。
ところで、ブランディングという言葉もよく使いますが、
ブランディングはどういうことをいうのですか?

櫻田:
ブランドを創り上げる意思と行動のことがブランディングです。
意思と行動というと難しく感じられるかもしれませんが、
要は熱烈なファンづくりといっても構いません。

岡本:
あるデータによれば、人は日常生活を送るなかで、意識か無意識は別として、
一日に5万回の判断と選択を行っているともいわれています。
店選びもその一つですね。
そして選択の基準が記憶のスタンプですね。
スタンプは一度だけで、強く捺されるわけではなく、
繰り返しの経験でさらに色濃く捺されるようになるということです。
記憶のスタンプが強くなればなるほど、その店のファンになるわけです。

※次回3回目に続きます。

2009年01月22日(木)更新

店のブランド力を強くする4つの法則①

私どもの会社、クエストリーは
「店がブランドになる」ことを支援・プロデュースすることをミッションにしています。


今回から7回に分けて、私たちが考えていることを少しご紹介したいと思います。
この原稿は、私たちが新規のお取引き先、あるいは仕事を始める際にお取引き先に
お渡しをしている参考資料の一部です。

文中の岡本というのは、私どものプランニングディレクターです。
私との対談形式になっています。

……というわけで、第1回目です。


<同質化競争では中小専門店は生き残れない>

司会:
このところ中小の専門店の苦戦が目立ちます。
本当に厳しいという嘆きの声が聞こえてきます。
その要因はどこにあるのでしょうか?

岡本:
そうですね、確かに景気や経済動向の影響は否めません。
どうしても環境や 条件のせいにしたくなりますが、
問題はもっと本質的なところにあります。
現実に、私たちのお取引き先でも、
景気など関係なく安定的に業績を伸ばしている店はたくさんあります。

櫻田:
お店の方とお話しをしていて感じることですが、3つの思い込みがあります。
ひとつは、地元のお客様は地元でしか買わないという思い込み。
ふたつ目は、固定客だから買う時には必ず我が店に来てくれるという思い込み。
3つ目は、商品がよければ買ってくれるはずという思い込みです。
この思い込みが実は怖い。

岡本:
消費者は買い物に対して自由です。
地元だけでしか買わないということはありません。
他の地域や場所に出かけて買うこともあります。
東京・銀座のお客様は地方の方が多いといいます。
さらに日本だけではなく、海外で買うこともあります。
それ以前に、外出をしなくても、テレビショッピングやインターネット、
通販でも買い物をしますからね。

櫻田:
そうだね。二つ目の固定客だからという安心感はお店側から見てだね。
お客様には関係ない、義理で買うということはないと思った方がいい。
当たり前のことだけれども、お客様は、自分の生活を豊かにするために
商品を買うのであり、店を儲けさせるために買うわけではないからね。

岡本:
商品がよければという発想も根強いですね。
そもそも、よい悪いという判断も店がくだしているわけで、
消費者からみるとまったく違う場合があります。
いい品なのにという見方のなかには、
こんなに安いのにという気持ちがどこかにあるような気がします。
他で売れているという評判も気にしすぎだと思います。
あいかわらず他で売れている品がいい品と思い、
これまでの売れ筋を追いかけている店が少なくありません。
反対に、他でどんなに売れていても、
自分の店に合わなければ取り扱わないという考えの店もあります。
いま安定的に業績を伸ばしている店はこのタイプが多い。
いい商品かどうかを決めるのは、店ではなくお客様です。

櫻田:
他と同じことをやっていれば何とかなった同質化競争では、
もはや中小の専門店は生き残れないね。
競争の広さと深さが以前とは比べようにないほど
大きくなってきているのだから………。
同じような商品を同じような売り方で、
同じようなお客様に売っている同質化競争で、
勝ち残れるのはひとつの商圏の中で1店舗のみ、しかも利益なき勝利だよね。
何よりも、消費者が同質化競争にNOといっている。

岡本:
そうですね、競争しないで、生き残ることがいま重要ですね。
一番の競争相手は、同業者や他店ではなくて、実はお客様なんですよね。

櫻田:
そうだね。ひたすら、お客様を見つめて、お客様が喜んでくれることを考え、
実践するということが一番の道だね。
私たちはそれをブランドというシナリオで組み立てているわけだけれも………。
   
※次回に続きます

2009年01月20日(火)更新

画家アンドリュー・ワイエス氏が亡くなりました

20世紀を代表するアメリカの画家、アンドリュー・ワイエス氏が
1月16日にペンシルベニア州フィラデルフィア郊外の自宅で亡くなりました。
91歳でした。静寂感が色濃く漂うこの画家の描く絵が僕はたまらなく好きです。
観ていると作品の向こう側にあるいろいろな物語を感じます。

ワイエスは、水彩やドライブラッシュやテンペラを使って、
アメリカの原風景ともいわれる故郷のペンシルベニア州やメーン州などを
描いた画家です。
人物画にもすばらしい作品を発表しており、
別荘近くに住むオルソン家のシリーズや
長年にわたって1人の女性を描き続けた「ヘルガ」シリーズなどがあります。

僕がワイエスの絵と始めて出会ったのは、高校生頃の時ですから、
いまから35年ほど前のこと。
当時発行されていた月刊「プレイボーイ」(たぶんです)に、
「クリスティーナの世界」という有名な作品が掲載されていたのです。
 
草原に横たわる遠くを見つめるクリスティーナという女性を描いた
この作品に僕は強く惹かれました。
その後、ずっとワイエスは気になる作家であり、
日本で展覧会があると、足を運びました。

30代の半ばにはアメリカのニューヨーク近代美術館(MoMA)で
「クリスティーナの世界」と出会うことが出来ました。
30分ほど作品の前から離れることが出来なかったことを覚えています。
メトロポリタン美術館の近くの画廊では、新作の作品展を偶然行っており、
観ることが出来ました。

1990年には池袋西武にあったセゾン美術館で
「アンドリュー ワイエス展」が開かれました。
ワイエスが近くの農場で働いているヘルガという女性を
モデルに描いたシリーズの作品展でした。

240点ほどにも及ぶこのヘルガのシリーズは、
誰にも見せることなく、長い間ワイエスのアトリエに保管されていました。
20年近く前にヘルガシリーズを見た時の衝撃は忘れられません。

ちょうどいま水彩や素描を中心とした
「アンドリュー・ワイエス-創造への道程(みち)」展が
愛知県美術館で開催されます。
昨年の11月には東京・渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで
開催されていましたので観に行きました。
会場ではワイエスの近況を伝える映像も流されており、
作品への情熱をいきいきと語っていました。
インタヴューで最近ハーレーダビットソンを描いたといっていたので、
まだまだ元気だなあと思っていたのに………。

いつかワイエスの作品がたくさん所蔵されている
ペンシルバニア州南西部ブランデイワイン河沿いにあるという
ブランディワインリバー博物館(Brandywine River Museum)に行ってみたい
日曜日にヘルガシリーズの画集や展覧会の目録を久しぶりに開いて、
そう思いました。

ヘルガシリーズ
ヘルガシリーズの画集より
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